電子政府実現に向けた緊急提言

 私も参加しております電子政府実現に向けての勉強会で「電子政府実現に向けた緊急提言」「電子政府図表」をまとめました。今週中に関係4大臣(官房長官、竹中大臣、総務大臣、経済産業大臣)に緊急申入れを実施する予定です。詳細は下記をご覧下さい。


 

電子政府実現に向けた緊急提言

衆議院議員  伊藤 信太郎 衆議院議員  後藤田 正純 衆議院議員  三ツ林 隆志
衆議院議員  石田 真敏 衆議院議員  近藤 基彦 衆議院議員  宮澤 洋一
衆議院議員  梶山 弘志 衆議院議員  左藤 章 参議院議員  愛知 治郎
衆議院議員  金子 恭之 衆議院議員  竹下 亘 参議院議員  小林 温
衆議院議員  北村 誠吾 衆議院議員  谷本 龍哉 参議院議員  野上 浩太郎
衆議院議員  小西 理 衆議院議員  平井 卓也  

趣旨

 構造改革の成果が見えないまま、出口のない閉塞感が漂っている。国民に蔓延しつつある無力感をできる限り早く払拭しなければならない。我々に残された時間はほとんど無く、今、ここで社会の閉塞を打開する一手を打たないと、21世紀はおろか、明日の日本はない。
 このような状況を打開するために、国民全員が納得し、将来に渡って挑戦する夢を与える政策が必要である。電子政府プロジェクトは恰好の政策である。そして、その夢の実現に向けて皆の力とやる気を結集するために、世界最高を目指すとする極めて高い目標設定が欠かせない。
 
なぜ、電子政府なのか。答えは3つある。

  1. 国民の目に見える行革であり、国民に対する行政サービスの飛躍的向上をもたらす。
  2. 小さな政府への道筋をつける財政再建への王道である。
  3. 質の高いIT需要創出を通じた経済活性化のための妙技である。

 しかしながら以下のような問題がある。

  1. 発表された電子政府世界ランキング(国民側から見た利便性)では、対象23カ国のうち、17位のランクしか獲得しておらず、しかも、昨年同ランクのままという惨憺たる状況にある。
  2. IT予算約2兆円のうち、約半分を占める電子政府関係予算について、効率的な企画及び執行の責任体制が不明確である。
  3. 電子政府の本質は行革であるという指摘が強くなされているにもかかわらず、小さな政府への道筋が見えてこない。
  4. 電子政府のシステム構築予算の増大に対して、発注者側の能力に問題があること。特に自治体においては、このような調達問題解決の道筋が完全には見えていない。

このような問題意識を背景に、議員有志は、数回にわたり自発的に電子政府に関する勉強会を行ってきた。このたび、その検討結果がとりまとまったので、その成果を報告することとした。

具体的な提言

  1. 体制に関すること
    (1) 各省庁は、情報システムの開発、維持管理及び効果測定に加え、人事、機構定員、業務全般に責任を持つ者をCIOとすること。
    (2) 各省庁は、業務の効率化及び情報化について、外部専門家からCIOを補佐するスタッフを任用するなどCIOの機能及び能力を充実させる方策を講じること。
    (3) 内閣に、各省庁のCIOで構成されるCIO連絡会議を設置すること。
    (4) 現行の電子政府評価・助言会議は、(3)のCIO連絡会議に対する助言機関として再設置すること。
    (5) CIO連絡会議及び電子政府評価・助言会議の議事については、すべて公開すること。

  2. 手続の見直し
       各省庁は、以下の基本的な考え方にのっとり、自ら所掌する手続きを徹底的に簡素・合理化するために、全面的に見直すこと。
    (1) 年間の申請件数がゼロの手続きは原則として廃止すること。例外として廃止が困難な手続きは、その理由を付して公表すること。
    (2) 1年に2回以上の届出などを義務付けている場合は、原則として頻度を半減させること。それができない場合は、理由を付して公表すること。
    (3) 添付資料については、原則としてすべてオンラインで提出できるようにすること。また、インターネット上の公開資料や一般に入手可能な資料を添付資料として義務づけている場合は、そのような措置は廃止すること。
    (4) 国民の利便性を最優先するため、複数官庁の共管手続や同一目的の関連手続を一回の手続で完了できるよう、手続の統合化や共有化を行うこと。そのために、全省庁の申請様式の統一を行うために、政府内に担当の部局を整備して、集中的に必要な作業を行うこと。
    (5) オンライン化によるメリットを国民サービスにつなげるために、[1]オンライン申請の手数料は、通常よりも相当程度安くすること、[2]手続きの処理期間を半減すること、[3]行政情報の電子保存を徹底することにより、国民からの情報公開請求に迅速に対応すること、の3点を行うこと。
    (6) 現在の各省庁のポータルサイトを、各省庁の担当部局ごとの設計ではなく、利用者の類型・属性ごとに、まさにその利用者にとってどういう設計がもっとも適切かという視点に立ち、行政からの情報提供にとどまらず、行政へのアクセス向上を目的にして、すべて作り直すこと。その際、総務省は全省庁を対象とする総合的なポータルを作り、それに従い、各省庁は個別のポータルを作ることとし、政府全体として、基本的思想が統一され、作成や運用では効率性が確保されるよう対応すること。
    (7) オンライン化によるメリットを、行政内部の業務の効率化につなげるために、例えば、申請を受けた後の省内の処理について、今までの紙による処理手順をそのまま電子化するのではなく、まず、決裁の徹底した委譲など処理手順を徹底的に簡素化した上で、電子決済等のシステムを活用して、効率化を図ること。

  3. 業務の効率化
    (1) 各省庁は、自らの業務の実態を正確に把握する観点から、業務の機能や特性に応じて、[1]会計、人事、厚生、共済、調達など官房基幹業務、[2]申請や手続きなど国民との接点業務、[3]担当する政策の企画及び実施など[1]、[2]以外の業務、など業務全般を大まかに分類し、それぞれについて、1年間を通じて、誰が具体的にどのような活動に時間を割いているのかなどを分析すること。その際、活動基準会計など民間の経営管理に有効とされる会計手法を用いるなどして、定量的及び科学的に行うこと。
    (2) その業務分析調査の結果は、CIOに報告するとともに、概要を公表すること。
    (3) 以上の業務解析の結果を受けて、各省庁は、単独で、あるいは関連する事務については関係省庁共同で、業務の効率化を進めるための具体的な方策を検討すること。特に、各省庁共通である官房基幹業務については、その業務の集約などサービス向上のためのスケールメリットに着目した効率化策を検討すること。

  4. 予算の効率化
    (1) 電子政府関係予算については、[1]その予算によって、どういう効果があるのか、何が合理化できるのかを定量的に計測し、[2]その予算及び執行に関する情報について、すべて各省庁のホームページにて公開すること。
    (2) 電子政府評価・助言会議は、各省庁の電子政府関係予算要求について、[1]省庁が類似のシステムを独自に開発運用するという無駄を排除するための汎用性確保、[2]実際の利用者の要望を具体的に反映する利用者利便の尊重、[3]トータルで見た場合に最も効率的で合理的な最新技術の採用の有無、[4]特定の業者のものしか利用できないといった事態を排除するために必要な相互運用性の確保などを調査し、その結果をとりまとめ、1ケ月のパブリックコメントを付した上で、公表するとともに、CIO連絡会議に提出すること。
    (3)電子政府に係る予算のチェックについては、各省庁横断的に査定する体制を整備し、その査定責任を明確にすること。そして、各省庁が類似の発注を重複して行わないよう適正にチェックすること。
    (4)各省庁の効率化インセンテイブを促進し、時々刻々と変化する関連技術動向を踏まえて最も合理的な技術選択を逐次行わせるため、電子政府において予算の枠を設定し、その範囲で債務負担行為の設定、移流用の容認など、電子政府予算内でのIT投資については執行の自由度を確保すること。枠は、ここ5年間の予算額、代替する技術によって削減可能な予算額などを総合的に勘案して設定すること。
    (5)同時に、以上のような執行自由度の拡大が悪用されないように、関連する契約などは完全情報公開するとともに、会計検査院は重点的に検査を実施すること。

  5. 公正な調達
    (1) 二度と、安値落札が生じないよう、加算方式による調達制度の適正な運用を早急に実施し、その結果を公表すること。また、公正取引委員会は、入札に関して不正がないよう、調達市場を監視するとともに、問題が生じた場合には、厳正及び迅速に対処すること。
    (2) 各省庁は、調達仕様書を作成する前に、まず、IT投資の企画などに関する専門家を活用するなどして各省庁が実現する情報システムの中期的な計画を作成し、その原案を公表し、パブリックコメントに付すること。当該中期計画に従いIT投資を適切に進めていくために、プロジェクトの進捗を定量的に把握する手法であるEVM(Earned Value Management)の活用などによるプロジェクト管理を行い、その進捗状況については、随時公表すること。
    (3) その中期計画に従い、当面必要となるハードウエアやソフトウエアの仕様を特定するとともに、そのシステムで達成するパフォーマンスレベルを定量的及び具体的に設定すること。
    (4) 各省庁のシステム調達部門においては、中期計画の策定、調達仕様書の作成、プロジェクト管理の実施など必要な能力を確保・向上させる観点から、先進官庁や民間による研修に、そうでない官庁の担当職員を参加させること。
    (5) 上記各省庁のシステム部門の取組みを円滑に進めるために、IT投資の企画、調達及び監理に通じたITの専門家を育成し、彼らを最大限有効活用するための具体的な方策を講じること。
    (6) 当該専門家は、各省庁のCIOを補完する外部スタッフとして、また、電子政府評価・助言会議のメンバーとして関連する活動を行い、具体的には、政府全体のシステムが効率的・効果的なものとなるよう、各省庁がIT投資を効果的に行うための調達プロセスの設計、IT投資案件の横断的な評価、政府全体としてのIT投資ガイドラインの策定など行うこと。
    (7) 発注と受注については、それぞれ仕組みを分離して、受注側が発注段階で利を得ることがないよう具体的な措置を講じること。

  6. スケジュール
    (1) 以上、1.から5.までの提言を受けて、各省庁は必要な作業や準備を直ちに開始するとともに、業務分析に必要な予算などの確保を行うこと。
    (2) 現行の行政情報化推進計画を改組・拡充して、電子政府構築計画として、本提言に即した検討結果を反映させること。その中で、効率化させる業務量、簡素化・廃止される手続数などについて、定量的な目標を設定すること。
    (3) 電子政府構築計画案は、平成14年末までにとりまとめることとし、平成15年早々に、公表し、1ヶ月のパブリックコメントに付すること。その上で、成案を得て、CIO各省庁連絡会議及び電子政府評価・助言会議に報告すること。
    (4) 電子政府評価・助言会議は、各省庁の電子政府構築計画を比較検討し、計画内容の優劣が明確になるような評価を行い、CIO各省庁連絡会議に報告すること。
    (5) 更に、各省庁の電子政府構築計画は、各省庁大臣から、平成15年3月を目途にIT戦略本部に報告されること。
    (6) 各省庁は、電子政府構築計画について、2年に1回は政策評価を行うことを通じて、必要な修正を図っていくこととし、総務省は各省庁の電子政府の取組みに関して、平成15年度に行政監察を実施すること。

  7. その他
    (1) 電子自治体の推進を図るため、中央政府においてなされた措置(CIOの設置、手続きの見直し、業務の効率化、調達制度の適正化など)について、それらが自治体における取り組みの雛形となるよう、政府は各種措置を整理し、必要なガイドラインを提示すること。なお、調達に関しては、複数の自治体が協力して効率的な対応ができるよう、調達連携に関するガンドラインを提示すること。
    (2) 地方自治体共通のシステムについては、LGWAN等を通じて各自治体がプログラムやデータベースを共有、共同経営できるように、政府が自治体の代表と協議してガイドラインを策定すること。
    (3) 電子自治体を競争的及び効率的に進めるために、各自治体における取り組みの状況を比較検討する方策を考案するとともに、電子自治体のボトルネックとなっている事情を明らかにすること。
    (4)以上の対応は、平成14年度までに措置すること。また、以上のような質の高い電子政府の構築に当たっては、アジア諸国との連携を深め、また、電子政府における技術の採用が世界への発信機能を持つよう配意すること。

結語

 以上、具体的な電子政府実現の諸策を提案したが、これらをすべて実現することで世界最高の電子政府の構築は、十分に可能であると考えられる。実現には、政治のリーダーシップと、各省庁の理解とそれに基づく確実な諸策の実施が不可欠である。

  そのためには、内閣に、世界最高の電子政府ができるまでの間、電子政府担当の専任大臣を置き、それを支える副大臣及び政務官を数名用意して、政治による主導体制を整備することが不可欠である。
 今、ここで再度、国民のため世界最高の電子政府を作るとした高邁な決意に思いを致し、その目標の実現に向かって、小異を捨てて取り組むべきと考える。これは、世界トップを獲得するという夢と目標に向かって、実際に始まる挑戦の物語であり、まさしく、我が国が一丸となって取り組む21世紀の「プロジェクトX」である。