現在、私たちは約三割の電力を原子力発電に頼っています。 しかし、福島原発の事故以来、原発はその安全面が問題視されています。 原発の安全面について論じるべきことは少なくありません。 そして同時に、原発以外の発電方法を検討し開発を進めることが、喫緊の課題として私たちに突き付けられています。
数多くある代替エネルギーのなかで、有力候補のひとつが地熱発電です。
地熱発電とは、文字通り地中の熱を利用して発電するものです。日本は火山の多い国ですから、地熱資源は豊富にあります。 日本が有する地熱資源量は2347万kW(キロワット)相当であると言われており、これは実に原発20基分に相当します。 世界有数の地熱資源国である我が国は、是非とも地熱発電の有効な活用を検討していく必要があります。
地熱発電の主だったメリットをいくつか挙げてみましょう。
①資源の枯渇がない。
地熱発電の資源は地熱ですから、資源にかかるコストはありません。
化石燃料と違い、資源自体が枯渇する恐れもありません。
②環境に優しい。
さらに、CO2の排出量も少ないため、環境に優しい発電方法と言えます。
③設備利用率が高い。
設備利用率とは、その値が高い程にその設備が有効に使えていることを示すわけですが、 太陽光発電12~20%、風力発電20%に対して、地熱発電の設備利用率は70%になります。 これは、地熱発電は、太陽光発電や風力発電と比べ季節・天候による影響を受けにくいためであり、 安定した電力を供給できることも意味しています。
④発電の二次活用も可能。
発電後の熱水は、ビニールハウス農業や魚の養殖などで利用することもできます。
このようなメリットのある地熱発電は、北海道の森発電所や八丈島地熱発電所などでその有効活用の事例が報告されています。
しかし、メリットばかりではなく、取り組むべき課題もあります。
まずは、規制の見直しです。
前述したメリットがあるにも関わらず、現在、我が国における地熱発電による電力供給は、 日本全体の総発電量の1%にも達していません。一般的に、地熱発電はコスト面や規制での制限が多いためです。 賦存量が多く、かつ、低コストで発電が可能な地域というのは、実は自然公園内に集中しているのです。 自然公園内での活動というのは、様々な観点から利用の制限があるわけですが、規制を見直し、 国立公園を初めとする地域での地熱資源開発を検討していく必要があります。
また、一部の地域において、発電の過程で温泉資源が減少・枯渇するという事例が取り沙汰されており、 しっかりとした調査、研究が必要となります。
この他、地熱発電にはまだまだ多くの課題があるのが実情です。
しかし、地熱発電は他の発電方法に比べ優れた点も多く、開発も視野に入れて取り組まなくてはいけない案件であると考えています。