(2)「大阪都構想」で東京のようにはなれない
東京都のようになれるという欺瞞
「大阪都構想」という名前によって、大阪の街が東京都のように発展するための構想だという印象をお持ちの方も少なくないかと思います。中には、現在の「大阪府」が「大阪都」に名称変更されると誤解されている方もおられます。しかし、「大阪都構想」(=大阪市の廃止・特別区設置)によって、「大阪都」の名称には決してなりませんし、東京都のような発展ができるわけでもありません。
東京と大阪の違いは多くありますが、東京が発展しているのは、単に首都だからです。都市制度は無関係なのです。特別区にすれば経済成長を遂げるといった因果関係は認められておりません。
「いやいや、副首都機能を大阪に持ってくるための<大阪都構想>なのだ」と反論があるかもしれません。しかしそれは詭弁です。「大阪都構想」(=大阪市廃止)などせず、大阪市を政令市として維持したまま副首都機能の補完ができるようにすればいいだけのことです。実際に、自民党内では、地方都市で首都機能を補完するべきだという声があります。大阪市の廃止と大阪府の副首都機能獲得との間には、なんの関係もありません。
大阪特別区は東京特別区より弱く、貧しくなる
東京と大阪の違いは首都機能の有無だけではありません。人口や住民の所得の面でも、決定的に異なります。そのため、「大阪都構想」が実施されたとき、現大阪市民(大阪新特別区民)は東京23区民より確実に、弱く貧しくなってしまいます。
先ず、東京23区と大阪市域には大きな人口差があります。現在、東京23区の人口は東京都人口の7割近くあり、23区選出の都議会議員は全体の過半数を占めています。都議会における特別区民の声は、人口に比例して大きなものです。一方、都構想後の大阪特別区(現在の大阪市)の人口は、府内人口の約3割です。府議会における特別区民の発言力も同程度で、少数派に留まるでしょう。大阪の特別区民は、東京23区民より議会での存在感を持てず、弱々しい発言力しか持ちえません。
次に、大阪と東京とでは、財政の差も指摘できます。例えば現在、大阪府民の所得(住民税課税対象)は東京都民の6割未満です。東京23区が良質な住民サービスを提供できているのは、首都という事情や都民の所得などに支えられた豊かな財政力がゆえのことです。大阪特別区では東京特別区ほどの豊かな財政は持てないのです。
大阪市が廃止され特別区が設置されれば、東京の23特別区よりも遥かに、議会での発言力が弱々しく、財政も貧しい自治体になるのは火を見るより明らかです。
そもそも特別区は時代遅れ
もっと言ってしまえば、特別区という制度自体、東京では評判が悪いというのが本当のところです。特別区という制度による経済成長の恩恵があるわけでもなく、制度的な不便さの方が目立ちます。実際、東京では特別区制度をやめる案が議論され、千代田区は”千代田市”になりたいと表明しており、同様の構想は世田谷区にもあります。これは当然でしょう。自分たちの税収によって地域のために開発をしたい、取り組みたいと思っても、一々東京都にお伺いを立てて、予算がもらえるように交渉し調整しなくてはいけないのですから。
今回のコロナ禍の問題についても、都と特別区との意思疎通がうまく行かず、対応が後手後手であったと、菅総理は官房長官時代に仰っています。大阪市ひとつを4つの特別区に割ってしまえば、東京と同じ轍を踏むことが予想されます。
次章では、これからの大阪が進むべきヴィジョンについて記します。